「深い学び」がずっとつかみにくかった理由 「統合的な理解・総合的な発揮」で何が見えるようになるか

「深い学び」がずっとつかみにくかった理由 「統合的な理解・総合的な発揮」で何が見えるようになるか 教員の当たり前を考え直す

「次期学習指導要領を読む」第3回です。「統合的な理解・総合的な発揮」、初めてこの言葉を見たとき、また難しい言葉が増えた、と感じた方も多いのではないでしょうか。

でも、読み進めてみると、これは新しく覚えなければならない内容ではありませんでした。いくつもの単元で学ぶ知識や技能が、最終的に子どもの中でどうつながってほしいのか。その「つながった先の姿」を、学習指導要領の中に書き込もうという工夫です。

これまで「深い学び」がつかみにくかったのは、私たち教師の力不足だけが原因ではなく、学習指導要領の書き方そのものに「深まった姿」が書かれていなかったからだ。審議まとめは、そう率直に認めています。この記事では、その理由と、新しい書き方で何が見えるようになるのかを整理します。


「深い学び」って、結局なんだったのか

経験のある先生には自然でも、多くの先生にはつかみにくい

「深い学びって、どんな学びですか?」と聞かれると、一言では答えにくいですよね。前回の改訂で「主体的・対話的で深い学び」が示されてから、校内研修で何度も「深い学び」について話し合ってきました。でも、「主体的」や「対話的」に比べて、「深い」だけはどうしてもイメージが共有しにくかった記憶があります。

審議まとめも、この点をはっきり書いています。「深い学び」は、経験豊富な教師にとっては自然と目指せるものだけれど、多くの教師にとっては各教科の具体的な場面でイメージをつかみにくいという指摘があり、学校現場への浸透は道半ばだ、というのです。

学習指導要領の書き方にあった2つの課題

では、なぜこんなにつかみにくかったのでしょうか。私たちの勉強が足りなかったから、なのでしょうか。審議まとめは、今の学習指導要領の書き方に、次の2つの構造的な課題があったと整理しています。

一つ目は、「深まり」が見えないことです。個別の知識や技能がつながり合って一般化された状態や、複雑な課題に向けて個別の思考力などを組み合わせて働かせている状態が、学習指導要領からはイメージしにくい。つまり、「一つ一つの内容」は書いてあるけれど、「それらが深まった先の姿」は書かれていなかった、ということです。

地図にたとえると、通る道の一つ一つは書いてあるのに、目的地が書いていない状態です。それでは、どこに向かって歩けばいいのか迷ってしまいますよね。

二つ目は、「一体的な育成」が見えないことです。ある程度の知識がなければ考えたり表現したりはできないし、考えたり表現したりする活動がなければ、知識の深い理解や技能の定着も難しい。この「知識と思考は一緒に育つ」という関係が、今の書き方からは読み取りにくい、という指摘です。

その結果として、教科書を網羅的に教える授業や、一時間ごとに完結させる「本時主義」から抜け出しにくかったのではないか、と審議まとめは続けます。この「本時主義」については、次回詳しく書きます。


「統合的な理解・総合的な発揮」とは

二つの言葉の意味

そこで新しく登場するのが、「知識及び技能に関する統合的な理解」と「思考力、判断力、表現力等の総合的な発揮」という二つの言葉です。審議まとめと資料編の説明を、できるだけかみくだいてみます。

図1:深い学びの実現に向けた各教科等の「統合的な理解」「総合的な発揮」の例
図1:深い学びの実現に向けた各教科等の「統合的な理解」「総合的な発揮」の例。教科ごとの「統合的な理解」「総合的な発揮」の例が一覧になっています。自分の担当教科を探してみると、イメージがつかみやすくなります(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.406[資料1-3-2])
  • 統合的な理解:個別の知識や技能が、互いに関連付けられて一般化され、まとまった理解になった状態
  • 総合的な発揮:複雑な課題の解決に向けて、個別の思考力・判断力・表現力等を組み合わせたり選んだりして、総合的に働かせている状態

そして、次の学習指導要領での「深い学び」は、「個別の『知・技』、個別の『思・判・表』について、一体的に育成しつつ、それらの統合的な理解や総合的な発揮を促す学びのプロセス」と定義されています。

算数「割合と比」の例で考える

言葉だけではイメージしにくいので、資料編に載っている小学校算数の例を見てみます。「変化と関係」の中の「割合と比」のまとまりについてのイメージです。

まず、個別の知識や技能として、次のような内容が並びます。

  • 単位量当たりの大きさの意味や表し方
  • 割合を用いた比べ方や、百分率を用いた表し方
  • 数量の関係を比で表したり、等しい比をつくったりすること

これらは、今の学習指導要領でも、5年生や6年生でそれぞれ別の単元として学んでいる内容です。

そのうえで、「統合的な理解」として、次のような姿が示されています。

単位量当たりの大きさや割合、比は、二つの数量の関係を数で表したものであり、その数を用いて、二つの数量の関係どうしを比べられることを理解する

そして、「総合的な発揮」として、次のような姿です。

事象における二つの数量の関係に着目し、比べ方を考察して、判断に生かす

単位量当たりの大きさ、割合、比。並べてみると、どれも「二つの量の関係」を扱っていますよね。これを読んで、私は「なるほど」と思いました。単位量当たりの大きさ、割合、比。子どもにとっては、学年も単元も違う、ばらばらの内容に見えています。でも、教師としては「どれも、二つの量の関係を数で表して比べるための道具なんだよ」ということを、いつか子どもにつかんでほしい。その「つかんでほしいこと」が、学習指導要領の中に書かれるようになる、ということです。

体育「ボール運動」の例

もう一つ、資料編から体育の例も紹介します。「ボール運動系、球技」のイメージです。

個別の知識や技能としては、ボールを用いたいろいろなゲームのルールや場・用具の使い方、ボール操作とボールを持たないときの動きの習得が挙げられています。

そして、「統合的な理解」としては、「ゲームの特性等に応じて、ボールの操作や動きを理解し判断することで、ゲームの楽しさや喜びを最大限味わうことができる」。「総合的な発揮」としては、「ゲームの特性等に応じて、運動の楽しさや喜びを味わうために必要なことを考え、動き・ルール・作戦等を工夫できる」という姿です。

パスの仕方、シュートの仕方、ルール……と一つ一つの技能を教えるだけでなく、それらがつながって「みんなでゲームを楽しむために、自分たちで工夫できる」ようになってほしい。体育の先生方が大切にしてきた考え方が、言葉として表に出てきた印象です。


誤解しやすいポイント

新しい「内容」が増えるわけではない

新しい言葉が出てくると、「また何か増えるのでは」と心配になりますよね。審議まとめは、「統合的な理解・総合的な発揮」は、それ自体を新しい内容項目として付け加えるものではない、と何度も念を押しています。むしろ、今ある内容から学習の本質や共通する構造を取り出して示し直したもので、内容の精選につながるものだ、という位置付けです。

「また覚えることが増えるのか」と身構える必要はない、ということです。

「到達目標」ではなく「方向目標」

もう一つ大事なのは、「統合的な理解・総合的な発揮」には、「何を」「どの程度」という到達の水準が示されていないという点です。水準は、これまでどおり個別の知識や技能、思考力等のほうで示されます。

審議まとめは、これを「いわゆる方向目標」と呼んでいます。単元ごとの「ここまでできるようになる」という達成目標とは性質が違い、内容のまとまりごとに「この方向に向かって深まっていってほしい」という向きを示すもの、という意味です。

評価規準を別につくる必要はない

そして、やはり気になるのは評価ですよね。評価についても、「統合的な理解・総合的な発揮」だけを取り出して評価規準をつくり、達成状況を評価することは求めない、とされています。二重の評価負担になることや、抽象的な概念の暗記を問うテストになってしまう懸念があるからです。

ただし、「学習評価と無関係」というわけでもありません。たとえば単元の学習の成果を「A:十分満足できる」と判断するときに、「統合的な理解・総合的な発揮」の記載を参考にする、といった使い方が考えられる、とされています。

「高次の資質・能力」という言葉は使わない

審議の途中では、「統合的な理解・総合的な発揮」をまとめて「高次の資質・能力」と呼んでいた時期がありました。でも、「よりレベルの高いものを求めている」という誤解を招くおそれがあるとして、次の学習指導要領では使わない方向です。研修資料などで「高次の資質・能力」という言葉を見かけたら、同じものを指していると考えてよさそうです。


見た目も変わる 表形式とデジタル化

図2:資質・能力に関連する主な要素間の関係性
図2:資質・能力に関連する主な要素間の関係性。告示の「目標」「見方・考え方」「内容」が、学習指導や学習評価でどう扱われるかを整理した図です(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.407[資料1-3-3])

学習指導要領が「表」になる

審議まとめは、この構造を分かりやすく示すために、学習指導要領を表形式で示す方向を打ち出しています。個別の知識・技能と、それと一体的に育てる思考力等を並べ、その上に「統合的な理解・総合的な発揮」を置く、というイメージです。

教科によって、知識・技能と思考力等を「並列」に並べる形と、思考力等の深まりを軸にして知識・技能がそれを支える形の、主に二つのパターンが考えられています。たとえば算数は「並列」、国語は思考力等を軸にする形、といった違いがあるようです。

「デジタル学習指導要領」へ

あわせて、学習指導要領をウェブサイトベースで提供する「デジタル学習指導要領」の構想も示されています。指導書から関係する学習指導要領や解説にリンクで飛べる、キーワードで検索できる、学年間や教科間のつながりが見やすい、生成AIが読みやすい形式でデータが提供される、といった機能が挙げられています。

学習指導要領の解説を開いても、目当てのページにたどり着くまでが大変ですよね。分厚い冊子とPDFで「必要な箇所を探す」だけで一苦労だった現状を考えると、ここは素直に期待したいところです。


子どもの側から見ると、何が変わるのか

ここまで教師の側の話をしてきましたが、子どもの側から見ると何が変わるのでしょうか。

審議まとめは、「統合的な理解・総合的な発揮」による構造化は、いわゆる学力向上にも大きく資するものだと書いています。全国学力・学習状況調査などで、基本的な概念の理解や、自分の意見を書く問題に課題が見られる中で、新しく学ぶ知識を既に知っている知識と関連付け、主要な概念を深く理解し、ほかの場面でも使える「確かな知識」として身に付けることに直結する、という説明です。

子どもにとって、単元ごとにばらばらだった知識が「あ、これとこれは同じ考え方だ」とつながる瞬間は、勉強が少しおもしろくなる瞬間でもあります。覚えることが減るわけではないけれど、覚えたことが「使える」ようになる。その手応えを、より多くの子が味わえるようにすることが、この構造化のねらいなのだと思います。

また、審議まとめは、外してはいけない「資質・能力の軸」がはっきりするからこそ、子どもの実態に応じた柔軟な教育課程や、一人一人に応じた多様な学び方が「場当たり的」にならずにすむ、とも書いています。ゴールの方向がはっきりしていれば、そこへ向かう道は子どもによって違っていてもいい。多様な子どもが学ぶ教室にとって、これは大きな意味を持つと感じました。


今から、授業づくりでできること

単元の前に「つながった先の姿」を一文で書いてみる

改訂を待たなくても、私が今から試してみたいと思っていることがあります。それは、単元を始める前に、「この単元とあの単元がつながって、子どもに最終的にどうなってほしいか」を一文で書いてみることです。

たとえば、4年生の「面積」なら、「広さは、単位となる正方形がいくつ分あるかで表せる。だから、形が違っても、くふうすれば広さを比べられる」といった具合です。これが、自分なりの「統合的な理解」の仮の文になります。

実際に書こうとすると、これが意外と難しいんですよね。私もまだ、うまく書けたと思える単元は多くありません。

子どもの言葉で「つながり」を確かめる

単元の終わりに、「前に習った○○と、今回の△△は、どこが似ているかな」と聞いてみるのも一つの方法です。子どもの口から「どっちも、1あたりで比べてる」といった言葉が出てきたら、それはまさに「統合的な理解」に向かっている姿だと思います。


うまく使えないところもあります

とはいえ、「統合的な理解・総合的な発揮」の文章は、どうしても抽象的になりがちです。資料編の例を読んでも、「では明日の授業で何をするか」まではすぐには結びつきません。

審議まとめもその難しさを認めていて、記載しただけで全ての教師の授業が変わるとは考えにくい、特に経験の浅い教師には適切なサポートが必要だ、と書いています。そのため、教科ごとに単元構想の「参考イメージ」を示す方向も打ち出されています。

完成した形を待ちながら、まずは自分の得意な教科の一つの単元で、「つながった先の姿」を考えてみる。それくらいの気持ちで向き合うのがちょうどいいのかもしれません。


「優れた先生の頭の中」を、みんなのものに

審議まとめの中に、「統合的な理解・総合的な発揮」による構造化は「優れた教師の理解を全ての教師の共有財産とするもの」という一文があります。

経験のある先生は、単元を教えながら、頭の中で「これは後のあの単元につながる」「ここで本当につかんでほしいのはこれ」と考えています。でも、それはこれまで、学習指導要領のどこにも書かれていませんでした。その「頭の中」を言葉にして、みんなで使えるようにしよう、というのが今回の工夫なのだと思います。

次回は、この考え方を実際の授業づくりにどう生かすかを、「本時主義から抜け出す」という視点で書きます。


中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)

同 資料編「深い学びの実現に向けた次期学習指導要領における各教科等の『統合的な理解』『総合的な発揮』の例」

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