5年生の理科、「ふりこのきまり」。ふりこが1往復する時間は、何によって変わるのか。おもりの重さか、ふれはばか、ふりこの長さか。答えは「ふりこの長さ」。
…と、答えを知っている先生が授業をすると、どうしても「長さで変わることを確かめる実験」になりがちです。でも、この単元の本当の面白さは、答えに行き着くまでの道のりにあります。
今回は、審議まとめが理科で強調している「科学的な探究」から、この単元を見直してみます。
審議まとめの理科
審議まとめは、理科について、小学校の段階から理科を学ぶ楽しさや意義を実感させること、そして小学校の段階から科学的な探究の過程を経験し、それを中・高と積み重ねていくことが重要だとしています。そのために、「科学的な探究」の過程を教育課程全体で位置付け、解説なども使って具体的に示すべきだ、と。
また、理科の目標の柱書を、小・中・高で統一して「自然の事物・現象を科学的に探究する資質・能力」とする方向が示されています。今の小学校理科の目標は「科学的に解決する」です。小学校から「探究」という言葉で統一される。
そして、新たな見方・考え方として、メディアリテラシーの観点も意識して、「自然や社会の事象・言説を、自然科学的な視点から捉え、観察、実験の結果や科学的知見などに基づいて、客観的、論理的、批判的に考察すること」という規定が考えられる、としています。
「ふりこ」は、探究の練習台にぴったり
なぜ「ふりこ」なのか。理由は3つあります。
①子どもの予想が割れる
「1往復の時間は、何で変わると思う?」と聞くと、子どもの予想は割れます。「重い方が速く動きそう」「大きくふった方が時間がかかりそう」「長い方がゆっくり」。どれも、生活の経験からそれなりの理由がある。
予想が割れるから、確かめたくなる。探究の出発点として、これ以上の条件はありません。
②条件を変える・そろえるが、はっきりしている
調べる条件は、おもりの重さ、ふれはば、ふりこの長さの3つ。一つを変えるときは、ほかの二つをそろえる。いわゆる「条件制御」の考え方を、これほどはっきり学べる単元はなかなかありません。
③結果が「ばらつく」
ふりこの実験は、ストップウォッチで測るので、結果がばらつきます。10往復の時間を測って10でわる。何回か測って平均する。測定には誤差があることを、体で知る単元でもあります。
授業で大事にしたいこと
実験の計画を、子どもに立てさせる
教科書には、実験の方法が書いてあります。でも、いきなりそれを見せるのではなく、まず子どもに考えさせます。
「おもりの重さで変わるか調べたい。どうする?」。子どもは、「重いおもりと軽いおもりで比べる」と言います。「じゃあ、長さは?ふれはばは?」。ここで、「同じにしないと、どっちのせいか分からない」と気づく子が出てきます。
この「同じにしないと分からない」を、子どもが自分の言葉で言えることが、この単元のゴールだと思っています。
予想が外れたことを大事にする
「重い方が速い」と予想した子は、実験の結果、予想が外れます。ここで、「外れちゃった」で終わらせない。
「どうして、重い方が速いと思ったの?」「実験の結果、何が分かった?」「じゃあ、最初の考えは、どこを直せばいい?」。予想と結果のずれから、考えを修正する。これが、科学的な探究の一番大事な部分です。
ばらつきを話し合う
班ごとの結果を黒板に並べると、同じ条件なのに、少しずつ違う。「どうして違うの?」と聞きます。「ストップウォッチを押すのが遅れた」「ふりこを手で離すときにずれた」。
ここで、「じゃあ、どうすれば正確になる?」と聞くと、「10往復を測る」「何回か測って平均する」と、子どもから方法が出てきます。教科書に書いてある方法の理由を、子どもが自分で見つける瞬間です。
「言説」を確かめる、への芽
審議まとめの新しい見方・考え方には、「自然や社会の事象・言説」とあります。現行の「(身近な)自然の事物・現象」から、対象を広げる方向です。
ふりこの単元の最後に、こんな問いを出してみてはいかがでしょう。
「『重いおもりの方が、ふりこは速く動く』と言っている人がいたら、何と言って説明する?」
自分たちの実験の結果を根拠に、誰かの言っていることを確かめる。これは、SNSで流れてくる「科学っぽい話」を確かめる力の、一番小さな練習だと思っています。審議まとめは、非科学的なデマ・フェイクニュースがSNSで急速に拡散する現状にも触れています。
ICTの使い方
審議まとめは、理科のICT活用の例として、センサーによるデータの取得、記録・データやその蓄積から観察・考察を深める、などを挙げています。
ふりこの単元でいえば、端末で動画を撮ってスロー再生すれば、往復の数え間違いが減ります。各班の結果を共有シートに入れれば、すぐにクラス全体のグラフができます。
ただ、測る体験そのものは残したい。ストップウォッチを押すタイミングがずれる、という体験があるからこそ、「誤差」の意味が分かるからです。
まとめ
- 審議まとめは、小学校から「科学的な探究」の過程を経験し、中・高と積み重ねることを重視し、理科の目標も「科学的に探究する」で統一する方向
- 「ふりこのきまり」は、予想が割れる、条件制御がはっきりしている、結果がばらつく、という探究の練習台にぴったりの単元
- 実験計画を子どもに立てさせ、予想の外れとばらつきを話し合う。最後に「誰かの言っていることを、結果で確かめる」問いを
「同じにしないと、どっちのせいか分からない」。この一言を子どもから引き出せたら、もう5年生の理科は半分成功です。
次回は、6年生の「電気の利用」で、新しく設定される「理科と日常生活」を考えます。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「理科」p.182、p.184、p.186、p.190 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」理科 第5学年 A物質・エネルギー(2)振り子の運動
- 関連記事:理科と生活科は何が変わるか 「身体性」と「科学的な探究」で、自然と向き合う(連載「次期学習指導要領を読む」)


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