#21 不登校の子の学びを「2階」で支える 特別の教育課程と、教室にいる私たちにできること

教育の動き・学習指導要領

「次期学習指導要領を読む」第21回です。空いたままの席を見ながら、「あの子は今日、どう過ごしているだろう」と気になる朝。担任をしていれば、そんな日を経験したことがある方も多いですよね。

審議まとめは、校内外の教育支援センターなどに通う不登校の子どもについて、必要な場合に「特別の教育課程」を編成できる仕組みを新しくつくる方向を示しています。ねらいは大きく二つです。

  • 教育支援センターで、居場所としての機能だけでなく、子どもの学習意欲や自己肯定感が高まり、資質・能力の向上につながる、組織的・計画的で効果的な指導ができるようにする
  • 不登校の子が取り組んだ学習内容や頑張りをできる限り受け止め、学習意欲や自己肯定感の向上につなげる評価ができるようにする

そして、審議まとめが繰り返し強調しているのは、この「2階」の仕組みがあるからといって、不登校の子を「別の場に任せておけばよい」と考えるのは適切ではない、ということです。教室にいる私たち担任の役割も、改めて問われていると感じました。


「1階」と「2階」という考え方

図1:柔軟な教育課程編成の促進(小・中学校の全体イメージ)
図1:柔軟な教育課程編成の促進(小・中学校の全体イメージ)。下の「1階」が学校全体の柔軟な教育課程、上の「2階」が一人一人に着目した特例です。不登校の子のための特例は「新設」とされています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.453[資料1-4-1])

1階:みんなの教育課程を柔軟にする

「特別の教育課程」と聞くと、少し遠い話に聞こえますよね。でも、審議まとめは、多様な子どもを包摂するための教育課程を、建物の「1階」と「2階」にたとえて、分かりやすく説明しています。

「1階」は、学校が共通に編成する通常の教育課程です。第10回で書いた調整授業時数制度などで、これを柔軟にしていくのが「1階部分の柔軟化」です。

2階:一人一人に着目した特別の教育課程

それでも十分な支援が難しい子どもに対して、個々の子どもに着目した特別の教育課程を編成するのが「2階部分の柔軟化」です。今でも、日本語指導が必要な子ども、通級による指導を受ける子ども、学齢を超過した人(夜間中学校)については、特別の教育課程の仕組みがあります。

今回、新しく「2階」に加えようとしているのが、校内外の教育支援センターなどに通う不登校の子どもと、特定の分野に特異な才能のある子ども(第34回で書きます)です。

1階と2階は「行き来する」

審議まとめは、次のように書いています。

「2階」の特例の適用がある児童生徒も、特別の教育課程による支援があるからこそ、それ以外の時間においては「1階」で他の児童生徒とともに学びやすくなるなど、相互に往還する互恵的な関係として捉え、教育課程全体としての包摂性を高めるという考え方に立ち制度設計を行っていく必要がある。

2階は、1階から切り離された別の場所ではなく、1階と行き来するための場所。この考え方が、制度全体を貫いているのだと思います。


なぜ新しい仕組みが必要なのか

とはいえ、なぜ今、新しい仕組みが必要なのでしょうか。

35万人という数字

審議まとめによると、令和6年度の小・中学校の不登校の子どもは約35万人で、過去最多です。こうした子どもを支えるため、校内外の教育支援センターの設置も増えていて、教育委員会が設置するものが1,873か所(令和6年)、校内に設置されているものが約1.6万校(令和7年)とされています。

今の仕組みにある二つの「隘路」

審議まとめは、今の仕組みには、次のような課題(隘路)があると指摘しています。

一つ目は、指導計画の問題です。教育支援センターでは、居場所としての機能だけでなく、学習意欲を高め、力を伸ばす計画的な指導が求められます。でも、状態が変わりやすく、学習に向かうことが難しいことの多い不登校の子に対して、そうした指導を全国的に実現する方策が十分ではない、というのです。特に、子ども自身が計画づくり(学習目標の設定など)に関わり、学びを積み重ね、前向きな経験にしていくことで、学習意欲や自己肯定感を取り戻していく。そうした新しい性質の個別の指導計画を、国として示す必要がある、とされています。

二つ目は、評価の問題です。下の学年の学び直しなどに懸命に取り組んでも、今の制度では在籍学年の教育課程に基づいて評価しなければならないため、評定が「1」や「-」になる場合が多い。そのことが、子どもや保護者の学習意欲や自己肯定感の低下につながっている、という指摘です。

この二つ目の課題を読んだとき、胸が痛みました。頑張って学び直したのに、通知表には「-」しか書けない。その現実に、もどかしさを感じてきた方は多いですよね。


新しい特別の教育課程の中身

対象は義務教育段階、主に「休み始め」と「回復期」

この特例の対象は、当面、小学校・中学校などの義務教育段階とされています。

図2:特例の対象となる児童生徒のイメージ
図2:特例の対象となる児童生徒のイメージ。「休み始め」「休養期」「回復期」と子どもの状態が変わっていく中で、特例の対象となる時期が示されています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.1026[資料2-3 不登校①])

また、教育支援センターを利用するすべての子どもが対象になるわけではありません。学びよりも休養を優先すべき時期を除き、「休み始めだが適切な伴走支援があれば学びに向かうことができる子ども」や「心身の状態が回復してきた時期に学びに向かいつつある子ども」を想定して、学校や教育委員会が総合的に判断する、とされています。断続的な欠席や早退、保健室登校などが見られ、不登校になる可能性が高いと考えられる場合も、対象になりうるとされています。

判断にあたっては、外形的な出席や学びの状況だけでなく、「学びに向かいたい気持ち」「学びに向けて続けている頑張り」を積極的に受け止め、励まし、継続的な学びにつなげるという視点が大切だ、と書かれています。

対象となる教育活動

特別の教育課程で扱う教育活動は、大きく二つに分けられています。

  • (A) 各教科等の目標・内容に基づきつつ、柔軟に実施する教育活動:下の学年・学校種の学び直し、オンライン配信などによる原籍学級の授業への参加、興味・関心を踏まえた学習活動など
  • (B) 各教科等には当てはまらない、不登校の子の実態に応じた特に効果的な教育活動:興味・関心に応じた探究的・体験的な活動、他者とのふれあいを図る体験的な活動、ソーシャルスキルトレーニングなど

すべての教科を実施しなくても、一部の教科だけで特別の教育課程とすることもできる仕組みにする方向です。いわゆる「居場所」としての活動は、引き続き教育課程外の取組と位置付けられます。

授業時数も柔軟に

授業時数は一律に定めず、子どもの実態を踏まえて、校長が適切な範囲で柔軟に設定できるようにする方向です。計画段階から標準授業時数を下回る時数を設定でき、その中での頑張りを積極的に評価できるようにする、とされています。

子ども自身が関わる「個別の指導計画」

そして、この仕組みの中心にあるのが「個別の指導計画」です。長期的な見通しを持つことや学習意欲を保つことが難しい傾向のある不登校の子には、通常よりも細やかで小さなステップを積み重ね、循環させていく「学びのサイクル」が大切だ、とされています。子ども自身が目標づくりに関わり、小さな達成を積み重ねる。そのプロセスそのものが、自己肯定感を取り戻すことにつながる、という考え方です。

図3:個々の児童生徒に係る教育課程の編成・実施のための「2階シート(仮称)」(イメージ)
図3:個々の児童生徒に係る教育課程の編成・実施のための「2階シート(仮称)」(イメージ)。ばらばらに作られていた支援計画や指導計画を、一つのシートにまとめるイメージです(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.1030[資料2-3 不登校⑤])

負担にも配慮

さらに、教師、学校、教育委員会に過度な負担や負担感が生じないようにすることも明記されています。国が「運用の手引き」をつくったり、指導員向けの研修動画をつくったりする方向も示されています。


教室にいる私たち担任にできること

制度の話を読んでいると、「それで、担任の私には何ができるんだろう」と思いますよね。ここからは、制度の話から少し離れて、私なりに考えてみます。

1. 「2階に任せる」ではなく「行き来を支える」

審議まとめが言うように、2階があるからといって、担任の役割がなくなるわけではありません。むしろ、教育支援センターと学級を行き来する子どもにとって、学級が「戻ってきやすい場所」であることが大切になります。

オンラインで授業に参加しやすくする。教室に来たときに、自然に迎え入れられる雰囲気をつくる。学級の様子を、本人が望む形で伝える。そうした小さな工夫が、「1階」の役割だと思います。

2. 教育支援センターの先生と情報を共有する

審議まとめは、特別の教育課程(2階)は通常の教育課程(1階)と分断されるものではなく、通常の教育課程での日常の見取りや指導・支援の工夫と、特別の教育課程での個に応じた指導・支援が互いに関連することで、教師の子ども理解が深まり、知見が蓄積・共有されることが期待される、と書いています。

教育支援センターで子どもが何に興味を持ち、どんな頑張りをしているか。担任は、それを知ろうとし、学級での様子と合わせて、子どもの全体像を見ていく。そのための情報共有を、日常的にしていけたらと思っています。

3. 「1階」そのものを、誰にとっても居やすい場所に

そして何より、「1階」である学級そのものを、誰にとっても居やすい場所にすることです。第13回で書いた心理的安全性、第11回で書いた学級全体のウェルビーイング。そうした学級づくりは、不登校の予防にもつながります。審議まとめも、安心できる学級(学校)の風土をつくることを通じて、いじめ防止や不登校への対応にもつなげていくことの重要性を書いています。


気になるところもあります

一方で、この制度がどこまで現場で機能するかは、まだ分かりません。教育支援センターの体制は地域によって大きく違いますし、指導員の確保や研修も課題になりそうです。審議まとめも、すべての教育支援センターでこの特例を実施するわけではなく、拠点となる学校を教育委員会があらかじめ決めることなども考えられる、と書いています。

また、「特別の教育課程の対象かどうか」を判断するプロセスが、子どもや保護者にとって負担にならないような配慮も必要だと思います。何より大切なのは、制度の枠組みではなく、目の前の子どもの「学びたい気持ち」に寄り添うこと。その原点を忘れないようにしたいと思います。


おわりに 頑張りを「-」で終わらせない

下の学年の学び直しに懸命に取り組んだ子に、「-」としか書けない。その現実を変えようとしていることが、この制度のいちばんの意味だと私は受け取りました。

不登校の子が、自分のペースで学び、小さな達成を積み重ね、それをきちんと認めてもらえる。そして、いつでも学級に戻ってこられる。2階と1階が行き来できる学校をつくることは、不登校の子だけでなく、すべての子どもにとって安心できる学校をつくることなのだと思います。

次回は、「考え、議論する道徳」へ、一つの教材を複数コマでじっくり扱う、という話を書きます。


参考にした資料

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)

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