どうも。「せいたか先生」です。
6年生の1学期に出会う論説文、「時計の時間と心の時間」。子どもたちが「あるある!」と言いながら読める、数少ない論説文じゃないでしょうか。楽しいことをしているときは時間が短く感じる。退屈なときは長く感じる。誰もが経験していることを、実験の結果も示しながら説明してくれます。
今回はこの教材を使って、審議まとめが国語で例に挙げている「論説を読む」「意見文を書く」「提案のスピーチをする」を一本の線でつなぐという考え方を、具体的にしてみます。
審議まとめに、ほぼそのまま書いてある
実は、審議まとめの国語のページには、こんな例がそのまま書かれています。
「論説を読む」「意見文を書く」「提案のスピーチをする」などの異なる領域の学習を、「考えや主張の理由付けと吟味」という「話や文章の機能」により関連付けた指導計画を構想しやすくする。
さらに教科書についても、この3つの学習は「領域や具体的な学習活動は異なるが、いずれも『考えや主張の理由付けと吟味』という機能に関わるものとして関連付けて配置することができる」とあります。主張と根拠の関係など、既に学んだことを思い出しやすくなる、と。
前回の「アップとルーズ」は「事実や知識の整理と理解」の機能でしたが、今回はその隣、主張と根拠の機能です。
教材の骨組み
まず、「時計の時間と心の時間」の構成を確認しておきます。
- 最初に、筆者の主張が示される(時計の時間と心の時間、二つの時間と付き合っていくことが大切、という方向)
- 「心の時間」の性質を、いくつかの具体例と実験で説明する(気持ちや体の状態、一日の時間帯、身の回りの環境などで感じ方が変わる)
- 最後に、もう一度主張を述べる
いわゆる双括型です。
そして、この文章のよいところは、主張と事例の関係が見えやすいことです。審議まとめでいう「基幹教材」、つまり身に付けたい力の中心を担う教材にちょうどよいんですね。審議まとめでも、「主張と根拠との関係、段落相互のつながりや論理の展開が比較的明確な論説等の文章」を基幹教材に、という例が挙がっています。
読むだけで終わると、何が残らないか
これまでの授業でありがちなのは、「事例を整理して、筆者の主張をまとめる」で終わることです。それはそれで大事です。ただ、子どもに「じゃあ、あなたは筆者の考えに賛成?」と聞くと、「賛成です。なぜなら、ぼくも楽しいときは時間が短いからです」となりがち。
これ、主張と根拠の関係になっているようで、なっていません。筆者の「事例」に自分の経験を足しただけで、筆者の主張そのものを吟味していないんです。
審議まとめが「吟味」という言葉をわざわざ入れているのは、ここだと思います。理由付けを「読み取る」だけでなく、「それで納得できるか」を考える。
一本の線にした単元の流れ
では、どうつなぐか。こんな流れを考えてみました。
①論説を読む 「この事例は、主張を支えているか」
本文の事例を整理したら、問いを一つ足します。「この事例の中で、主張を一番強く支えているのはどれ?」「逆に、なくてもいい事例はある?」
子どもは案外、遠慮なく言います。「実験の話がある事例の方が説得力ある」「自分の体験だけだと、人によるって言われそう」。ここで、根拠には強い・弱いがあることに気づかせます。
②意見文を書く 「自分の主張に、どの根拠を選ぶか」
次に、身近なテーマで意見文を書きます。テーマは、筆者の話題につなげるなら「時間の使い方」。たとえば「休み時間はもっと長い方がいいか」「宿題は朝やるのと夜やるのとどちらがいいか」など。
ポイントは、①で考えた「根拠の強さ」を使うことです。自分の経験、友達へのアンケート、調べた情報。どれを根拠にすると一番納得してもらえるか、選ばせます。
③提案のスピーチをする 「聞き手は納得したか」
最後に、書いた意見文をもとに、学級や学年への提案スピーチをします。聞き手には、「納得した理由」と「もっと知りたい根拠」を一つずつ書いてもらいます。
ここで、書くときには気づかなかった「根拠の弱さ」が、聞き手からの質問で見えてきます。審議まとめが「協働」を重視しているのは、こういう場面のためでもあるのでしょう。
時数はどうするか
「3つもやったら時数が足りない」という声が聞こえてきそうです。私もそう思いました。
ただ、多くの教科書では、論説文の単元の近くに、意見文や話すこと・聞くことの単元が置かれています。これを別々の単元として最初から最後まで行うのではなく、同じ「主張と根拠」の力を三回使う一つの流れと考え直す。そうすると、それぞれの単元の導入や、毎回の「主張と根拠とは」の説明が重複しなくなります。
審議まとめは、教科書について「基幹教材」と「関連教材」をはっきりさせ、関連教材は学校や子どもの状況に応じて弾力的に使える、という方向も示しています。今の教科書でも、どれを中心に据えるかを先生が決めることはできます。
評価について
評価は、③のスピーチだけで総括しない方がいいと思っています。審議まとめも、「思考・判断・表現」は単元の成果としてのパフォーマンスで総括的評価を、と言いつつ、途中は形成的評価で学習改善に生かすことを重視しています。
私なら、②の意見文で「根拠を選んだ理由」が書けているかを中心に見ます。スピーチは、緊張したり話すことが苦手だったりする子もいるので、話し方の上手さが「思考・判断・表現」の評価に混ざらないように気をつけたいところです。
AIの時代に、なぜこの学習か
最後に少しだけ。審議まとめは、国語で「自らの考えを言葉にし、論理的かつ説得的に表現し対話する力」を「人間ならではの力」として挙げています。
意見文くらいなら、AIはそれらしく書いてしまいます。だからこそ、「なぜその根拠を選んだのか」「その根拠で本当に納得できるか」を自分で説明できることが大切になる。「時計の時間と心の時間」は、筆者が実験という根拠を持ち出して読者を納得させようとしている文章です。その工夫を見抜いた子は、自分が書くときにも「どうやって納得させるか」を考えるようになります。
まとめ
- 審議まとめは、国語の例として「論説を読む」「意見文を書く」「提案のスピーチ」を「考えや主張の理由付けと吟味」でつなぐ考え方を示している
- 「時計の時間と心の時間」は主張と事例の関係が見えやすく、その中心(基幹教材)にしやすい
- 「事例を整理する」で止めず、「この根拠で納得できるか」まで考えさせると、書く・話すにつながる
次回は6年生の後半、メディアと情報を扱う教材で、「情報の信頼性・妥当性」の話をします。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「国語」p.130、p.133、p.137〜139 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」国語 第5学年及び第6学年 A話すこと・聞くこと(1)、B書くこと(1)、C読むこと(1)
- 一川誠「時計の時間と心の時間」(光村図書『国語 六』)
- 関連記事:「相手にどう受け取られるか」まで考えて書く 理由と根拠で意見を育てる国語へ(連載「次期学習指導要領を読む」)


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