どうも。「せいたか先生」です。
2年生の「スイミー」。小さな黒い魚のスイミーが、大きな魚に仲間を食べられ、一人で海を泳ぐうちに、すばらしいものに出会っていく。そして最後は、みんなで大きな魚のふりをして、「ぼくが、目になろう。」。
この物語、筋だけ追えば短い話です。でも、真ん中の「海の中のすばらしいもの」の場面、ここが本当に美しいんですよね。
にじ色のゼリーのようなくらげ。
水中ブルドーザーみたいないせえび。
今回は、この場面を使って、審議まとめが国語で言っている語彙の話を考えます。
審議まとめの「語彙」
審議まとめは、語彙について、こう書いています。
生成AIが発展する中、人間ならではの実感を伴った理解や思考、表現を支える語感を磨き、語彙を豊かにするための学習として、以下の二つの方向性の学習が相互に影響し合って深まるようにする。
その二つが、
- 文脈の中で語句を「使い」ながら、主に語感を磨く学習の充実
- 語句の意味や、語句同士の関係を理解しながら、主に語彙を豊かにする学習の充実
です。
ここで出てくる「語感」という言葉。言葉の意味を知っているだけでなく、その言葉がもつ感じ、手ざわりのようなものが分かること、と私は受け取っています。「ぶよぶよ」と「ぷるぷる」は、どちらもやわらかいけれど、感じが違う。そういう感覚です。
「スイミー」は、語感の宝庫
「スイミー」の真ん中の場面は、比喩の連続です。
- にじ色のゼリーのようなくらげ
- 水中ブルドーザーみたいないせえび
- 見たこともない魚たち。見えない糸で引っぱられている
- ドロップみたいな岩から生えている、こんぶやわかめの林
- うなぎ。顔を見るころには、しっぽをわすれているほど長い
- 風にゆれるもも色のやしの木みたいないそぎんちゃく
2年生にとって、「くらげ」は知っていても、「にじ色のゼリーのような」と言われて初めて、あの透き通った、ぷるんとした感じが目に浮かぶ。言葉の意味ではなく、言葉が呼び起こす感じを味わう場面です。
授業でやってみたいこと
①「ような」を取ってみる
「にじ色のゼリーのようなくらげ」から、「にじ色のゼリーのような」を取ると、ただの「くらげ」。「どっちが、スイミーがびっくりした感じが伝わる?」と聞きます。
当たり前のようですが、2年生は案外、ここで「わあ」となります。言葉一つで、見え方が変わる。これが語感の入り口です。
②別の言葉に変えてみる
「水中ブルドーザーみたいないせえび」の「ブルドーザー」を、別のものに変えてみます。「水中トラックみたいな」「水中ロボットみたいな」。
「どれが一番いせえびっぽい?」と聞くと、子どもは真剣に考えます。「ブルドーザーは、前にガーッて進むから、いせえびの足っぽい」。これが、審議まとめのいう「文脈の中で語句を使いながら語感を磨く」学習です。
③自分で作ってみる
最後に、「スイミー」の続きとして、スイミーが出会うもう一つの「すばらしいもの」を、自分で考えて書きます。「〇〇みたいな△△」の形で。
教室では、図鑑や写真を見ながら書かせると、言葉が出やすくなります。「ふわふわのわたあめみたいなクラゲ」「花火みたいなウニ」。子どもの言葉は、時々大人の想像を超えてきます。
「理解」の方向も忘れずに
審議まとめは、語感を磨く学習だけでなく、「語句の意味や、語句同士の関係を理解しながら、語彙を豊かにする学習」も並べています。そして、二つが「相互に影響し合って深まる」ように、と。
「スイミー」でいえば、
- 「ような」「みたいな」は、ほかのものにたとえるときに使う言葉だと知る
- 様子を表す言葉(ゆらゆら、すいすい など)を集める
- 「すばらしい」「おもしろい」などの気持ちを表す言葉を、もっと細かく言い分ける
こういう「理解」の学習があるから、使うときに選べるようになる。逆に、使ってみたから、言葉の意味が実感を伴って分かる。行ったり来たりの関係です。
なぜ今、語彙なのか
審議まとめは、国語の課題として、語彙の習得に課題があると書いています。そして、その語彙を「人間ならではの実感を伴った理解や思考、表現を支える」ものとして位置付けています。
AIは、たくさんの言葉を知っています。でも、「にじ色のゼリー」を見て、透き通ったものがゆらゆらしている感じを、体のどこかで感じるのは人間だけです。少なくとも今は。
2年生の教室で、「スイミー」の言葉をゆっくり味わう時間は、案外、これからの時代に一番必要な時間なのかもしれません。
時数の話
この活動、全部やると時間がかかります。なので、私なら、③の「自分で作る」を国語の時間に全員でやり、作った文を教室に掲示して、朝の会や帰りの会で一つずつ紹介する、くらいにします。
審議まとめは、調整授業時数制度の「学習枠」の例として、辞書を使った語彙指導のプログラムなども挙げていますが、低学年なら、毎日の数分の積み重ねで十分だと思っています。
まとめ
- 審議まとめは、語彙を「人間ならではの実感を伴った理解や思考、表現を支える」ものと位置付け、「使いながら語感を磨く」と「理解しながら語彙を豊かにする」の二つの方向を示している
- 「スイミー」の真ん中の場面は比喩の連続で、語感を味わう教材として最適
- 「ようなを取る」「別の言葉に変える」「自分で作る」で、使う学習と理解する学習を行き来させる
「ぼくが、目になろう。」の場面だけが「スイミー」じゃない。真ん中の場面にも、ちゃんと時間をあげてください。
次回は、同じ2年生の「お手紙」で、音読劇と「協働」を考えます。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「国語」p.127、p.135、p.140 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」国語 第1学年及び第2学年〔知識及び技能〕(1)オ、C読むこと(1)エ
- レオ=レオニ作・谷川俊太郎訳「スイミー」(2年の各社教科書)
- 関連記事:「スイミー」の教材研究 「ぼくが、目になろう。」をどう読ませるか


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