「本時主義」から抜け出す 教科書“を”教えるのではなく、単元から授業をつくる

「本時主義」から抜け出す 教科書“を”教えるのではなく、単元から授業をつくる 教員の当たり前を考え直す

「次期学習指導要領を読む」第4回です。授業の準備をするときはどうしていますか。

審議まとめを読んで気づいたのは、そこに描かれている授業づくりが、「教科書の次のページ」からではなく、「この単元で、どんな力を身に付けてほしいか」から始まっていることでした。そのうえで単元のまとまりを考え、教科書や教材の使い方を決め、最後に一時間一時間の授業をつくる。この順番に立ち返ることが、「本時主義」から抜け出す第一歩だと思います。

「教科書で教える」という言葉は、教員になってから何度も聞いてきました。それでも実際には、「今日は教科書の何ページから何ページまで」と考えて授業をしてしまう日が多いのが、私の正直なところです。

今回の審議まとめは、この「教科書を教える」状態から抜け出せない理由を、教師個人の意識の問題だけにせず、学習指導要領、教科書、指導書、評価の仕組みといった環境全体の問題として捉えています。この記事では、その整理と、今からできる単元づくりのヒントを書きます。


「本時主義」とは何か

一時間で完結させようとする授業づくり

審議まとめには、「本時主義」という言葉が何度も出てきます。説明を拾うと、「各時間の授業を単独で完結させようとする」授業づくりのことを指しています。

一時間ごとにめあてを立て、まとめをして、振り返りを書く。多くの教室で、毎日当たり前のように行われている流れですよね。その一時間はきれいに見えても、単元全体を通して子どもの中で何がつながっていくのかが見えにくくなる。審議まとめは、この本時主義と、教科書「を」網羅的に教える授業を、セットで脱却したいものとして挙げています。

評価にも影響している

本時主義は、評価にも影響していると指摘されています。

各時間の授業を単独で完結させようとする本時主義とも相まって、毎回の授業で複数の観点で「総括的評価」に向けた記録に残す評価を行うなど、評価のために過度な労力が割かれ、学習や指導の改善に十分に注力できていない実態も見られる。

毎時間、観点ごとに評価の記録をつける。ドキッとした方もいるのではないでしょうか。私自身、身に覚えがあります。評価のための授業になってしまい、子どもの様子をじっくり見る余裕がなくなっていた時期がありました。


なぜ抜け出せなかったのか

では、なぜ私たちは本時主義から抜け出せなかったのでしょうか。審議まとめが挙げる原因を読むと、「自分だけのせいではなかったのか」と少しほっとします。

学習指導要領が「日常的に開かれていない」

審議まとめは、教科書を教える授業や本時主義につながりやすい原因の一つとして、学習指導要領が日常的に参照・活用しにくいことを挙げています。紙の冊子とPDFでは必要な情報が探しにくく、前後の学年や他教科とのつながりも確認しにくい。その結果、「身に付けるべき資質・能力」を意識しづらくなる、というのです。

学習指導要領を毎日開いている先生は、きっと多くないですよね。私もそうです。開くのは、指導案を書くときや研究授業の前くらいです。日々の授業準備では、教科書と指導書を見るのが精一杯です。

教科書が「充実しすぎている」

もう一つの原因として、教科書の充実が挙げられているのが印象的でした。

今の教科書は、学習に必要な情報の大半を網羅し、多くの用語やキーワード、確認問題まで載っています。だからこそ、教科書だけで授業を完結させることができてしまう。そして、「厚い教科書を全て教えなければ」「時数を確保しないと教科書が終わらない」という意識が、授業進度の速さや過度な授業時数の設定にもつながっている、と指摘されています。

指導書どおりにすべき、という認識

さらに、「指導書のとおり授業を行うべきとの認識」が教師によって強く、創意工夫や力量向上を妨げている面もある、とも書かれています。

指導書はとても心強い存在です。ただ、指導書の流れを一時間ずつなぞっていくと、自然と本時主義になってしまう。その構造があるのだと思います。

単元計画が「学習内容の羅列」になっている

審議まとめは、単元計画についても触れています。単元計画案は「個別の学習内容の順番を各時ごとに示すものに留まっていることも多い」というのです。

1時間目は○○、2時間目は△△……と並べた表。多くの方が書いたことのある形ですよね。それは、たしかに私がこれまで書いてきた単元計画そのものでした。


審議まとめが描く、授業づくりの順番

「力」から出発して、最後に一時間をつくる

では、どう変えていくのか。審議まとめは、次のような順番で授業をつくるプロセスを描いています。

図1:「統合的な理解・総合的な発揮」等を生かした単元構想の参考イメージ(小学校・算数科)
図1:「統合的な理解・総合的な発揮」等を生かした単元構想の参考イメージ(小学校・算数科)。5年「割合」を例に、先生が学習指導要領を確かめながら単元を考えていく流れが描かれています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.439[資料1-3-7])
  1. 学習指導要領や子どもの実態を踏まえて、「どのような力を身に付けてほしいか」「どこに重点を置くか」を考える
  2. そのための授業のまとまり(単元や題材)を構想する
  3. そのうえで、教科書や教材をどう使うかを考える
  4. 一コマ一コマの授業をつくる

当たり前の順番に見えますよね。でも、実際の授業準備を振り返ると、私の場合はたいてい4から始まっています。この順番を逆向きにたどることが、本時主義から抜け出す鍵なのだと思います。

単元計画を「資質・能力のつながり」で描く

単元計画についても、審議まとめは「学習内容の羅列」という捉え方にとどめず、「資質・能力の繋がりで単元全体を捉え、資質・能力を関連付けて深めていくプロセスを描く」ものとして構想できるようになることが大切だと書いています。

図2:「統合的な理解・総合的な発揮」等を活かして単元を構想するプロセスの一例(小学校・算数科)
図2:「統合的な理解・総合的な発揮」等を活かして単元を構想するプロセスの一例(小学校・算数科)。単元の目標から1時間ごとの学習内容までが、資質・能力のつながりとして一枚に整理されています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.440[資料1-3-8])

ここで生きてくるのが、前回書いた「統合的な理解・総合的な発揮」です。単元を通して、子どもの中でどんな知識がつながり、どんな力が発揮されるようになってほしいのか。その「向かう先」があるからこそ、一時間一時間の授業が、ばらばらではなくつながったものになります。

評価課題と学習過程をセットで考える

評価の章でも、同じ考え方が示されています。学習評価のプロセスとして、次の3つを一体的に構想する必要があるというのです。

  1. 育成したい資質・能力の明確化
  2. 資質・能力の発揮を見取る評価課題のデザイン
  3. 評価課題に向けて「深い学び」を実現する学習過程のデザイン

つまり、「単元の最後に、子どもにどんな課題に取り組んでほしいか」を先に考え、そこに向かう学習の流れをつくる、ということです。評価課題としては、ペーパーテストだけでなく、論述・レポート・発表・作品製作などが例に挙げられています。評価のことは第7回で詳しく書きます。


教科書と指導書も変わる方向

教科書の「精選」

変わるのは、私たちの授業づくりだけではなさそうです。審議まとめは、教科書の側も変えていく方向を示しています。教科書の内容を「統合的な理解・総合的な発揮」を実現しやすくなるように精選し、教科書で得た理解を広げたり深めたりするための多様な情報は、その他の教材で得るという役割分担を考える、というものです。

そのときに、紙の教材に加えて、デジタル学習基盤や学校図書館・公立図書館がインフラとして機能する、とも書かれています。

指導書で「構造」を示す

指導書についても、「統合的な理解・総合的な発揮」に至るための問いや評価課題、学習過程が明確になった教科書をつくり、指導書でその構造をより具体的に示していくことが重要だ、とされています。

経験の浅い先生でも、自然と「統合的な理解・総合的な発揮」を念頭に置きながら授業づくりができるようになる環境を整えていく。そのために、教科ごとに単元構想の「参考イメージ」も示す方向です。ただし、教師が参考イメージを常に作成することは想定していない、とわざわざ書かれているのは、ありがたいところです。


今からできる単元づくりのヒント

とはいえ、改訂を待たなくても、今の教科書のままで試せることはありそうです。私が意識してみたいことを、具体的に書いてみます。

1. 単元の最初に「最後の課題」を決める

単元を始める前に、「単元の最後に、子どもに何ができるようになっていてほしいか」を、具体的な課題の形で考えてみます。

たとえば4年生の算数「面積」なら、「L字型の部屋の広さを、自分のやり方で求めて、友達に説明する」といった課題です。これが決まると、途中の一時間一時間で何を大切にすればよいかが見えてきます。

2. 単元計画に「つながり」の矢印を書き込む

単元計画の表をつくるとき、各時間の内容の横に「ここで学んだことが、どこにつながるか」を矢印やメモで書き込んでみます。1時間目の「単位となる正方形」が、5時間目の「くふうして求める」につながる、といった具合です。

それだけで、単元計画が「内容の羅列」から「つながりの地図」に少し近づきます。

3. 教科書を「全部」ではなく「選んで」使う

教科書のすべての問題を同じ重さで扱うのではなく、単元の最後の課題につながる問題に時間をかける。逆に、さらっと扱ってもよい部分を見極める。教科書を教えるのではなく、教科書で教えるための、小さな一歩です。

ただし、審議まとめは、基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得も強く求めています。算数の項目では、練習量が足りず定着が図れていない例があることも指摘されています。「選ぶ」ことは「削る」ことではなく、「どこに時間をかけるか決める」ことだと考えたいと思います。

4. 毎時間の評価記録を見直す

記録に残す評価を、毎時間ではなく、単元の中のいくつかの場面に絞ってみる。その代わり、途中の時間は、子どもの様子を見てその場で声をかけることに力を使う。審議まとめが「総括的評価の場面の精選」と「形成的評価の充実」として示している方向です。


学年で取り組むなら

ここまで読んで、「全教科でそんなことをする時間はない」と感じた方も多いですよね。私もそうです。だからこそ、単元づくりは、一人で抱え込むよりも、学年で分担したほうが続けやすいと思います。学年で取り組むなら、こんな進め方が考えられます。

教科ごとに「単元の最後の課題」を分担して考える

小学校の担任は、ほとんどの教科を一人で担当しています。全部の教科で単元全体を見通すのは、正直なところ現実的ではありません。審議まとめも、小学校では大多数の教師が複数教科を担当していて、全単元について「指導と評価の計画」を作成するのは現実的ではないという声がある、と書いています。

そこで、学年の先生で教科を分担し、それぞれが「この単元の最後の課題」と「つながりのメモ」を一枚にまとめて共有する。完璧な単元計画でなくても、最後の課題と、そこにつながる大事な時間が分かるだけで、ほかの先生の授業づくりはずいぶん楽になります。

学年会で「単元の振り返り」を5分だけ

単元が終わったら、学年会で5分だけ、「最後の課題で、子どもはどうだったか」を話し合う。うまくいったこと、つまずいたことを共有するだけで、次の年の単元づくりの材料になります。


うまくいかないこともあります

正直に書くと、単元全体から考える授業づくりは、最初はかえって時間がかかります。単元の最後の課題を考えるだけでも、教材研究が必要です。全部の教科、全部の単元でやろうとすると、すぐに息切れしてしまうと思います。

だからこそ、最初は一つの教科の、一つの単元から始めるのがいいのではないでしょうか。うまくいったら、学年の先生と共有する。審議まとめが示す「研究・研修等枠」(第10回で書きます)のような時間が生まれれば、こうした単元づくりを学年や学校で一緒に取り組めるようになるかもしれません。


おわりに 「今日の一時間」を、単元の中に置き直す

本時主義から抜け出すといっても、一時間一時間の授業を大切にしなくていい、という意味ではありません。むしろ、「今日の一時間」が単元全体のどこにあって、何につながっているのかが見えていることで、一時間の授業の意味がはっきりします。

次の学習指導要領は、その「つながり」を見えやすくするための工夫を、学習指導要領、教科書、指導書、評価のすべてで進めようとしています。私たちにできるのは、その方向を先取りして、まずは一つの単元で試してみることだと思います。

次回からは、評価の話に入ります。第5回は「学びに向かう力」が4つの要素に整理される、という話です。


参考にした資料

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)

コメント

タイトルとURLをコピーしました